性犯罪を起こしてしまったら
昨今,犯罪現象傾向が顕著な中で,性犯罪は減少傾向にはありません。警察庁が2022年2月8日に公表した犯罪統計においても,強制性交等罪の検挙人員は,2017年には910人であったものが5年後の2021年には1,251人に増加しており,強制わいせつ罪は,2017年に2,837人であったのが2021年には2,903人に微増しています(出典: 警察庁刑事局捜査支援分析管理官2021年犯罪統計資料)。
性犯罪を起こしてしまい,悩まれている方へ。その悩みは,いつ警察がやってくるだろうか,逮捕されるだろうか,家族も職も失ってしまうかもしれない,そういった悩みであろうと想像します。
特に,強制性交等,強制わいせつでは逮捕の可能性が高く,その人の生活や周囲の環境は一変します。痴漢や盗撮などの条例違反事件での逮捕事例は少なくありません。このような逮捕のリスクを少なくするには自首等の行動が必要になる場合もあります。仮に逮捕を回避できたとしても性犯罪事件を解決するためには示談が必要です。
ここでは,性犯罪で逮捕された場合の手続や自首等による逮捕回避,更に性犯罪における示談について説明します。(代表弁護士・中村勉)
性犯罪事件で逮捕されたら
性犯罪事件で逮捕されると検察庁に事件が送られ,10日間の勾留となる可能性が高く,裁判官により勾留が認められた場合,延長でプラス10日間の身柄拘束が続く可能性が高いです。
そこで,このような長期間の身柄拘束を避けるためには弁護士の力が必要になります。
弁護士を依頼するということ
性犯罪事件において,加害者がすぐに弁護士をつけると被害者の方の印象が悪くなるのではないかと心配されるかもしれません。
それは,つける弁護士によります。被害者案件に多く携わっている弁護士であれば,被害者の方の気持ちにそった弁護活動,つまり示談交渉ができますが,自己中心的に高額な示談金だけで事件を解決しようとする,依頼者の意に沿うままに被害者の気持ちを考えずに示談交渉に臨む弁護士に対しては被害者は憤りを感じ,示談がまとまらないこともあります。
究極的には依頼の反省を促すことも更生させることも自己変革させることもできないのです。
自首による逮捕回避について
逮捕を回避するうえで最初に検討しなければならないのは,自首です。自首は罪を認める場合に行われますが,例えば,性交渉に関して同意があったなど,事件性を否認する場合には,警察では被害者の一方的な話しか聞いておらず,その被害供述を重要証拠として逮捕状を請求するので,逮捕される可能性があります。
そこで,事件を否認する場合であっても,警察署に任意で出頭して事情を説明する必要がある場合もあります。
また,仮に逮捕を回避できたとしても性犯罪事件を解決するには結局示談しかありません。逮捕されてしまい,起訴されそうなケースにあっても起訴を回避するには示談しかないのです。
示談には弁護士が必要です。示談交渉で最も重要な被害者感情に配慮した交渉について説明します。
性犯罪の弁護は示談に始まり示談に終わります
性犯罪の贖罪は被害者の方の立場に立つことが重要です。性犯罪事件を起こしてしまったあなたにとって最悪な結果を回避するためには示談が必須であり,示談成立のためにまず思いを致すべきは,性犯罪の被害にあった被害者のことです。
犯罪のほとんどは自己中心的に敢行されます。相手の気持ちは度外視して自己の欲望の赴くままに犯罪を行うのです。お酒に酔って自分の心の中にある悪き欲望が呼び起こされることもあります。そうした罪は,同じく自己中心的な発想では決して償うことはできません。何とか会社を首にならないように,何として妻や子供に知られないように弁護士を雇って上手く解決できないか,そういう自己中心的な発想では罪を償うにはほど遠いのです。
自己中心的な発想で,「腕のいい」弁護士を雇って高額の示談金を支払って,当初の目的通り,会社がクビにならなくても,家族に知られなくても,自己中心的に犯罪を行ってしまったあなた自身は何も変わっていないのです。自分を変えましょう!
人間は変わることができます。その一歩として,何よりもあなたの行為で被害に遭った方のことを考えてみてください。そこから贖罪が始まり,更生が始まります。
被害者の方の精神的肉体的な苦痛
被害者の方の気持ちを想像してみてください。レイプ(強姦)や強制わいせつ,そして痴漢・盗撮といった性犯罪の被害に遭われた方は,被害に遭ったことそれ自体を誰にも話したくない,知られたくないという方が多いと思います。性犯罪被害者の方は,レイプ(強姦),強制わいせつ,痴漢・盗撮といった事件を思い出すのも苦痛ですし,親には知られたくない。交際相手の彼氏にも性犯罪被害に遭ったことを知られたくない。ましてや,性犯罪者を処罰して欲しいのに,警察や検察庁で自分が何度も何度も性犯罪の被害について同じことを聞かれたくはないうえ,もちろん承諾や同意があったのではないかなどと疑われたくはない。
結局,悔しいけれども,性犯罪者の処罰を求めて警察に訴え出ることを諦め,被害届は出さず,泣き寝入りするしかないと判断されている被害者の方もいます。
性犯罪の被害に遭った日のことを思い出すと一晩中眠れなくなります。夜中に突然目を覚ますこともあります。つい事件に遭ってしまったことを考えてしまう自分がいて,しかし,それを相談する相手もいなくて一人で抱え込んでしまいます。
睡眠不足から体調不良を引き起こし,自分が被害者なのにどうして自分だけが苦しみ,犯人は平気で社会生活を送っているのかという,絶望に近い憤りを感じます。
性犯罪の加害者更生プログラム受講の重要性
性犯罪の加害者に対しては,刑罰をもって足りるというのが伝統的な考え方でしたが,近時,刑罰と同時に,あるいは,刑罰に替えて加害者の更生のための制度の利用により,加害者の更生に向けた働きかけが重要であるという理解が,特に欧米において広まりつつあり,わが国でもいくつかの民間団体や公的団体が活動し,加害者更生プログラムを用意し,その受講を通じて更生改善を図り,その結果を司法に場において被疑者被告人に有利な情状として主張する傾向が強まりつつあります。
そこには,特に,再犯傾向の強い性犯罪にあっては,加害者更生は刑罰のみによっては必ずしも果たせないこともあり得るとの理解が基底にあります。また,性犯罪は飲酒による酩酊の過程に敢行されることも多く,単に性的な傾向のみならず,アルコール依存症とも密接にかかわっている場合が多いので,そうしたアルコール依存症治療を先行させる必要性も言われています。
性依存症治療専門のクリニックにおける加害者更生プログラムの内容としては,個人面談及びグループワークを基本とし,性犯罪に特有な「認知のゆがみ」を改善していくことや,被害に遭った女性心情を理解することなど,健全な考え方に調整する訓練などを実施していきます。
被害者代理人の経験ある弁護士を
当事務所の弁護士は,刑事事件を多く取り扱っております。また、かつて被害者の立場に立って検事として経験を積んだ弁護士も複数おります。そうした経験を基に加害者の弁護人として数多くの示談を成立させてきました。
同時に,加害者の方の新しい人生の門出となるよう努めてきました。特に,性依存症治療で評価の高い専門クリニックと提携しており,単に目先の刑罰回避ないし軽減ということにとどまらず,将来にわたって再犯に陥ることのないような加害者更生のための弁護活動も行っております。
ご依頼者の方の「感謝の声」は以下をご覧ください。
被害者の方は代理人弁護士をつけることが多いです
性犯罪被害に遭われた方は,警察に被害届を出すべきかどうか,加害者を告訴すべきかどうかなどについて,専門家の意見を聞くために弁護士をつけることがあります。被害者の代理人となった弁護士は,被害者の利益のためだけに活動し,捜査・公判の全過程にわたって積極的に活動します。
特に,被害者参加制度というものがあり,被害者参加人となった弁護士は,性犯罪被害者の方に代わって,公判期日に裁判に出席し,検察官の権限行使に関し,意見を述べ,説明を受け,時には,証人に尋問したり,被告人に質問することも出来るうえ,事実関係や,法律の適用や量刑について意見を陳述することもできるのです。
加害者の方は,その意味でも弁護士を雇い,相手方代理人との交渉や公判対応,さらに民事の損害賠償請求に対する対応に当たらなければなりません。
性犯罪弁護 最新情報・コラム
参考
性犯罪被害者の代理人はどのような活動をするか,以下をご覧ください。