犯罪被害者参加制度

 これまでは裁判手続の蚊帳の外にあった被害者の方々も,今では検察官と一緒になって裁判に参加する制度が設けられました。弁護士が被害者と共に,または被害者に代わって犯人の刑事裁判に出廷し,被害者の気持ちを代弁する支援を積極的に行っています。

参加者

 一定の定められた犯罪の被害者となってしまった方が,裁判所の決定により裁判の日に自ら出席して犯人に対して質問ができるなど,被害者も犯人の処罰の場に参加できるという制度です。
 直接の犯罪被害者だけでなく,被害者が亡くなっている場合には被害者本人の配偶者,直系親族,兄弟姉妹の他,被害者が未成年者であれば,その両親も参加することが可能です。

対象事件

 裁判所の決定により裁判に出席できると認められると「被害者参加人」と呼ばれることになります。
 対象となる事件は下記のとおりです。

  • 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(例: 殺人罪,傷害致死罪,保護責任者遺棄致死傷罪,逮捕監禁致死傷罪,強盗致死傷罪,強盗強姦致死傷罪など)
  • 強制わいせつ罪,強姦罪,準強制わいせつ罪,準強姦罪
  • 業務上過失致死傷罪,自動車運転過失致死傷罪
  • 逮捕及び監禁罪
  • 未成年者略取及び誘拐罪,営利目的等略取及誘拐罪,身代金目的略取等罪,所在国外移送目的略取及び誘拐罪,人身売買罪,被略取者等所在国外移送罪,被略取者等所外国外移送罪,被略取者引渡し等罪
  • 上記の未遂罪

参加の方法

 参加の意思表示の方法としては,犯人が起訴された後であればいつでも申し出を行うことができますが,これは検察官を通じて裁判所に刑事裁判への参加を申し出ることにより行います。
 裁判所はその申し出によって犯罪被害者を刑事裁判に参加できる被害者参加人として決定するのです。

参加できる内容

 被害者参加人は①公判期日に出席すること,②検察官の権限行使に関し,意見を述べ,説明を受けること,③証人に尋問をすること,④被告人に質問をすること,⑤事実関係や法律の適用について意見を陳述することができます。

公判期日への出席

公判期日への出席 裁判はあらかじめ開廷時間と法廷が決まっているのですが,被害者の方々が公判期日等の通知を希望する場合には,検察官から当該期日や開廷時間等が通知されることになります(被害者等通知制度)。
 また,実際の裁判では,被害者の方々は傍聴席に座る場合と,検察官側に座る場合とがあるので注意が必要です。

検察官への意見申述権及び検察官の説明義務

検察官への意見申述権及び検察官の説明義務 意見申述の対象となる検察官の権限には証人尋問,論告求刑だけでなく,訴因変更請求権や証拠調べ請求権,上訴権等がすべて含まれます。
 被害者参加人と検察官が面会したり電話等で連絡を取ったりする中で,意見の申述や検察官による説明が行われることになります。

証人尋問

証人尋問 証人尋問は,一般情状に関する事項(被害感情や被告人の反省の状況等)に関して,情状証人の供述の証明力を争うためのものに限られます。ですので,犯情(犯行の態様・動機・結果・共犯事件における役割等)に関する尋問をすることはできません。
 証人尋問の申出は,検察官の尋問が終わった後直ちに尋問事項を明らかにして検察官に対して行います。なお,被害者参加人は証人尋問の請求自体をすることはできません。

被告人質問

被告人質問 被害者参加人は,被告人に対し意見陳述に必要がある事項について質問することができます。
 情状に関する事項に限られない点で,証人尋問の場合とは異なります。
 「意見陳述」には犯罪事実や犯情に関する意見の陳述も含まれ,質問に対する被告人の供述は証拠となります。被告人質問の申出はあらかじめ質問事項を明らかにして,検察官に対して行います。

最終意見陳述

最終意見陳述 最終意見陳述は検察官の論告求刑の後で,訴因として特定された事実の範囲内で行います。
 控訴事実や量刑の基礎となる事実に関する主張,法律の解釈や適用に関する意見,量刑に関する意見を陳述することもできます。
 最終意見陳述の申出はあらかじめ陳述する意見の要旨を明らかにして,検察官に対して行います。