強制わいせつで逮捕された場合の流れ

 逮捕された場合には,その翌日又は翌々日に検察庁に送致され,検察官の取調べ(弁解録取)を受けます。
 その際,検察官は,被疑者を10日間留置する勾留を裁判所に請求するかどうかを決定します。検察官が勾留請求しない場合には即日釈放されますが,検察官が勾留請求すると,被疑者はその日か翌日に裁判所に行き,裁判官の勾留質問を受けます。裁判官が勾留決定をした場合には,検察官の勾留請求日から数えて10日間,留置施設に留置されることになります。この時,裁判官が勾留請求を却下した場合には,被疑者は釈放されます。
 検察官は,最大20日間の勾留期間のうちに,被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定しなければならず,その決定ができないときは被疑者を釈放しなければなりません。
 このように,逮捕されるとそれだけで長期間勾留される可能性があります。勾留を避け,又は勾留されたとしてもできるだけ速やかに身体拘束を解きたい場合には,弁護士が身柄解放に向けた活動を行うことが必要です。

強制わいせつとはどのような罪か

 強制わいせつ罪は,刑法176条で定められている犯罪です。
 ①13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者,②13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者について,強制わいせつ罪が成立すると考えられています。
 なお,刑法178条1項で,準強制わいせつ罪が定められています。準強制わいせつ罪とは,人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心身を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせてわいせつな行為をした者に成立する犯罪で,強制わいせつ罪と同じ法定刑が定められています。

強制わいせつの成立要件

 強制わいせつ罪が成立するための要件について解説します。

①被害者が13歳以上の場合について

 まず,「わいせつな行為」が必要です。
 「わいせつな行為」とは,「性欲を刺激,興奮又は満足させ,かつ,普通人の性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為」をいいます(名古屋高裁金沢支部昭和36年5月2日下集3巻5=6号399頁)。代表的な例は,女性の胸や陰部を直接触ったり舐めたりする場合ですが,態様によっては服の上から触る行為も当たります。
 次に,「暴行又は脅迫」が必要です。
 ここでの「暴行又は脅迫」とは,「被害者の意思に反して当該わいせつ行為を行うに必要な程度に抗拒を抑制する程度・態様の暴行・脅迫」をいいます。この場合の「暴行」の定義が非常に広いことに注意が必要です。いわゆる殴る・蹴るといった暴力でなくても,胸や陰部を触るために体を掴んだり,服を脱がせたりする行為も「暴行」に当たります。
 また,被害者にわいせつ行為に対する同意がある場合には,被害者の性的自由を侵害する違法な行為に当たりませんので,強制わいせつ罪は成立しません。
 そのため,わいせつ行為について被害者の同意がないことが強制わいせつ罪の要件となります。

 加えて,被疑者・被告人に強制わいせつ罪の故意があることが必要です。
 ここでいう故意とは,強制わいせつ罪の成立要件に該当する事実を認識・認容していることです。つまり,被害者の同意がなく,「暴行又は脅迫」に当たる行為を行って,「わいせつな行為」に当たる行為を行ったことの認識・認容が必要です。
 例えば,嫌がる言動をしている被害者の服を無理やり脱がせて胸を直接触った場合には,当然,自身が服を脱がせたことや胸を触ったことを認識・認容しているわけですから,故意が認められることになります。「服を脱がせることが暴行とは思わなかった」と主張をしたとしても,その行為自体を認識・認容していれば原則として故意が認められます。
 一方で,13歳以上の被害者について,被疑者・被告人が被害者の同意があると誤信した場合,強制わいせつ罪は成立しません。
 および被疑者・被告人がそのことを認識・認容していること(故意)が必要です。
 ここで注意しなければならないのは,「同意があるかもしれないし,ないかもしれない」という様に,同意がない可能性を少しでも認識している場合には,いわゆる「未必の故意」があるとして同意がないことの故意が認定されてしまうということです。
 そのため,同意があると誤信したという主張が認められるためには,基本的には被害者から明確にわいせつ行為に対する同意が示されたことが必要になります。「単に嫌がる様子がなかったから,同意があると思った」という主張は刑事裁判では認められないことが多いのが実情です。

②被害者が13歳未満の場合について

 被害者が13歳以上の場合と同様「わいせつな行為」が必要ですが,「暴行又は脅迫」は必要ありません。
 故意についても,被害者が13歳未満であること及び「わいせつな行為」に当たる行為の認識・認容があれば足り,被害者の同意は問題になりません。
 そのため,被害者が13歳未満の場合には,被害者の同意があったとしても,強制わいせつ罪が成立することになりますので,「同意があると認識していた」という主張をしたとしても,犯罪の成否には影響しません。

強制わいせつ事件の量刑

 刑法176条は,強制わいせつ罪の法定刑を,「6月以上10年以下の懲役」と定めており,罰金刑の規定はありません。このことからも,強制わいせつ罪が刑法で厳しく処罰されていることがわかります。
 痴漢や盗撮等の迷惑防止条例違反の性犯罪は,罰金刑も定められていますので,初犯の場合で被害者と示談ができない場合には,略式罰金といって,書面での手続きのみで罰金刑の略式命令を受ける簡易な手続きがとられるのが通例です。
 これに対し,強制わいせつ罪は,罰金刑がない以上,起訴されてしまうと,公開法廷での正式な裁判が開かれることになります。初犯だから示談ができなくても不起訴となることは原則としてありません。被害者との間で示談が成立し,被害者が被疑者の刑事処罰を望んでいないことが明らかになれば,不起訴処分となることが多いです。
 そのため,強制わいせつ罪で逮捕された場合に不起訴処分を獲得するためには,弁護人を選任して示談交渉を行ってもらうことが極めて重要です。
 刑事裁判になった場合にも,示談が成立して被害者の方が重い処罰までは望んでいないことが明らかになれば,量刑上そのことが大きく考慮され,執行猶予付きの判決が下されることも多いです。したがって,起訴後であっても,弁護人が被害者に改めて示談の申入れを行い,粘り強く交渉することが大切です。
 なお,強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪に該当する行為を行い,よって人に傷害を負わせた場合には強制わいせつ致傷罪が,死亡させた場合には強制わいせつ致死罪が成立します(刑法181条1項)。この場合の法定刑は,「無期又は3年以上の懲役」となります。

強制わいせつで弁護士をつけるメリットについて

 既に起こしてしまった事件でまだ警察から連絡が来ていなくても,逮捕を恐れてご相談に来る方は少なくありません。逮捕されていない段階でのご相談の場合は,弁護士が相談者から事情を入念に聞き取り,現場の状況や当時の被害者の様子,事件発生の時期など,様々な要素を考慮して,警察が立件する可能性や立件したとして逮捕可能性を判断し,逮捕される可能性が高い場合には自首を勧め,ご依頼者様と一緒に警察署に出頭して自首します。逮捕の回避を求める意見書を持参し,弁護士が警察官を説得することで,逮捕を回避して在宅捜査で事件を進めることができる可能性があります。
 また,既に警察から相談者に電話等の連絡があった後に当事務所への相談に至る事例もあります。その場合には,弁護士が速やかに依頼人の弁護人となり,警察官に連絡を取るなどしてできる限り捜査状況の把握に努め,警察官と話をして在宅捜査のまま進めるよう説得します。
 しかしながら,強制わいせつ致傷の事案や未成年の被害者に対する事案など,重大事件の場合には,弁護人の活動によって逮捕を避けられない場合も少なくありません。
 そのような事例であっても,逮捕前に弁護士にご相談いただくことで,逮捕された場合に速やかに身柄解放のための弁護活動を開始することができるので,あらかじめ弁護士へ相談することが有効です。また,元々逮捕が検討されていた事案だったとしても,逮捕前に示談が成立すれば,逮捕を回避することが十分可能です。
 前述したとおりに弁護士が手を尽くしても犯行の態様によっては逮捕される場合もあります。しかし,弁護士は逮捕されたとしても勾留を避けるための弁護活動を行います。具体的には,検察官に対しては勾留請求をしないように,裁判官に対して勾留決定をしないように説得するための意見書を提出し,時には面談や電話によって検察官や裁判官と話をします。
 適法な勾留のためには,逃亡や罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由が必要とされています。
 そのため,意見書の作成にあたっては,被疑者となった依頼人の方の誓約書やその家族の身元引受書,逃亡や罪証隠滅の可能性が低いことを示す疎明資料を用意し,説得的な意見書を作成します。
 勾留となれば,長期間の身体拘束を余儀なくされる可能性が高く,学校を退学になったり職場で解雇されたりすることは珍しくありません。
 依頼を受けた弁護士が速やかに身柄解放のために活動することで,そのような重大な不利益を避けられる可能性が高まります。

強制わいせつ事件での示談の必要性

 強制わいせつ罪において不起訴処分を獲得するために最も重要なのは,被害者とされている相手方と示談をすることです。強制わいせつ罪は親告罪ではないので,被害者の告訴がなくても起訴される可能性があります。
 もっとも,捜査段階において被害者との間で示談が成立し,被害者から当該事件につき宥恕してもらえた場合には,不起訴となることが見込まれます。親告罪でなくなったとはいえ,被害者の処罰感情はなお検察官の起訴・不起訴の判断において重要な判断要素となるからです。
 強制わいせつ事件を含め,性犯罪事件では,示談の成立は,どのタイミングでも被疑者側に有利な事情として扱われますので,否認事件でない限り,可能な限りすべきです。ただ,タイミングによってその効果は大きく異なることに注意が必要です。
 一番理想的なのは,捜査段階での示談です。捜査段階できちんとポイントを押さえた内容の示談ができれば,不起訴になる確率が高くなります。
 一方,捜査段階で示談できず,起訴されてしまうと,公判段階で示談ができても前科が残るのはもちろんのこと,実刑になる可能性も残ります。
 強制わいせつ事件でも,行為態様や被害者の数,同時に起訴された罪名,前科等によっては,公判段階で示談が成立していても実刑判決が出ているケースが見られますので,服役を回避するためには,捜査段階における被害者との示談,すなわち,早期の弁護士依頼と示談交渉の着手が非常に重要です。

強制わいせつで逮捕されたときの示談交渉

 強制わいせつ事件で逮捕された場合,10日間の勾留やその後の更なる10日間の勾留延長も,早期に示談が成立しない限りは必至です。また,勾留されている以上,ご自身での示談は不可能です。
 勾留決定されると,必要な要件を満たせば,裁判所に国選弁護人を選任してもらうことができます。しかし,国選弁護人は,必ずしも刑事事件に精通している弁護士が選任されるとは限りません。性犯罪に遭われた被害者は深く傷つき強い被害感情を有している場合が殆どです。被害者の心情を汲み取った丁寧な示談交渉が必要です。刑事事件の経験の少ない弁護士が選任された場合には,被害者の感情に十分配慮した対応ができず,示談交渉が難航する場合もあります。
 上述したとおり,強制わいせつ事件を含む性犯罪の事件においては,捜査段階における被害者との示談が非常に重要です。強制わいせつ事件で逮捕・勾留されてしまった場合には,勾留満期日の数日前には検察官が起訴・不起訴の方針を決めますので,それまでに被害者との示談を成立させることが必要です。
 このように,強制わいせつで逮捕された場合には,時間制限がありますので,なおさら,そのような時間制限をきちんと意識でき,かつ,示談交渉に手慣れている刑事弁護士に早期に依頼すべきといえるでしょう。
ひとたび逮捕されると勾留や勾留延長がほぼ避けられない強制わいせつ事件であっても,被害者との間で早期に示談が成立すれば,勾留延長前や勾留満期日前に釈放されることもあります。早期の示談の成立によって,検察官が不起訴の方針を早めに立てることができるからです。
 したがって,捜査段階での早期の示談成立は,実刑回避や起訴回避というメリットに加え,身柄の早期釈放のメリットもあるといえるでしょう。
 なお,通常,示談は当該犯罪事実を認めている場合に行うものですが,依頼人の方が無実を主張している場合であっても,迷惑料として一定の金銭を被害者の方に支払って示談することがあります。刑事裁判となれば,被告人の側は無実を訴えていても有罪判決を受けるリスクがあり,被害者の方においても証言を余儀なくされるおそれがあり,更なる肉体的・精神的負担を負うことになるからです。
 そのような事件の場合には,弁護人から言い分が対立していることを率直に被害者とされる相手方に伝え,示談によるメリットが大きいことや示談金が適正額であることを丁寧に説明して相手方の説得に努めます。

強制わいせつ事件の示談金相場

 強制わいせつ事件には様々な態様のものがありますので,示談金の額も様々です。また,被疑者の資力や被害者の感情等にも大きく左右されますので,相場というものは出しにくいですし,仮にあったとしてもそこまで当てになりません。
 ただ,強制わいせつ事件の示談においては,示談金が100万円を超えることは珍しくなく,少なくとも50万円程度は示談金として用意できないと示談成立は難しいというのが一応の目安になるかもしれません。
 13歳未満の被害者に対する強制わいせつの場合には,被害感情が峻烈であることが予想される被害者の保護者が交渉相手となりますので,示談金額は高額になる傾向にあります。
 なお,被害者側から示談のための金額を提示されることもあるかもしれません。その金額に納得できるのであれば問題ありませんが,もし納得できない場合やその額を支払う資力がない場合,あるいは,資力はあったとしても,その額が法外ではないかと疑問に思う場合には,弁護士にご相談ください。当該具体的事案に即して,被害者が示談によらず民事訴訟で慰謝料を請求してきた場合に認められ得る額や,被害者の提示額を争うことによるデメリット,争わずに応じるメリット,考え得る被害者との今後の交渉方法など丁寧にご説明いたします。

まとめ

 以上のように,強制わいせつ罪で逮捕された場合の流れと重要なポイントについて解説をしてきました。
 強制わいせつ罪で逮捕された場合,早期の身柄解放や不起訴処分の獲得を目指すには弁護士による示談交渉などの迅速かつ適切な弁護活動が必要です。ご家族が強制わいせつ罪で逮捕された方は是非弁護士にご相談ください。