準強制わいせつで逮捕されたら|量刑や弁護活動について弁護士が解説

はじめに

 「飲み会の流れで女性と良い雰囲気になり,勢いで性的な行為に及んだが,後日に合意がなかったとして警察沙汰になってしまった」当事務所はこのような相談を頂くことが多く,警察が準強制わいせつ罪の疑いがあるとして捜査を行う事案です。
 また,ニュースなどでは,マッサージ師や整体師など,患者に触れる仕事をする施術者が,施術を称してわいせつな行為を行い,刑事事件に発展したケースが報道されることもあり,このような事案も準強制わいせつ罪に問われる可能性があります。

 このページでは,準強制わいせつ罪で逮捕されたらどうなるのかについて,弁護士・坂本一誠が解説します。

準強制わいせつとは

 準強制わいせつ罪は,刑法178条1項に規定されています。

第178条1項(準強制わいせつ)

 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

「心神喪失」とは

 心神喪失とは,精神又は意識の障害によって,正常な判断能力を失っている状態をいいます。
 例えば,酩酊,高度の精神病等により被害者が行為の意味を理解できない状態にある場合が当てはまります。飲み会の流れで,酔っている女性に対してわいせつな行為に及ぶような事案が典型例です。

「抗拒不能」とは

 抗拒不能とは,心神喪失以外の理由で心理的又は物理的に抵抗が不可能となっている状態,若しくは著しく困難な状態のことをいいます。
 具体的には,患者がマッサージ師を信頼していたため,マッサージ師のわいせつな行為を治療に必要な行為と誤信してしまった場合,女子高生が自校の英語教師から紹介された英語の先生を信頼していたため,心理的に抵抗することが著しく困難であった場合などがあります。
 被害者が知的障害を有しており,性的行為の意味を理解できないために抵抗することが困難なケースも抗拒不能に該当します。

「わいせつ」とは

 わいせつな行為とは,いたずらに性欲を興奮又は刺激させ,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為を指します。代表的なものは,キスをする,女性の胸を直接揉む,陰部を触ったり指を入れたりするといった行為になります。
 人が心神喪失や抗拒不能状態であるのを良いことにそれを利用してわいせつ行為に及んだ場合のみならず,何らかの方法で人を心神喪失状態や抗拒不能状態にしてわいせつな行為をした場合にも準強制わいせつ罪が成立します。
 暴行や脅迫を用いてわいせつ行為に及んだ場合には強制わいせつ罪が成立しますが,暴行や脅迫を用いていなくとも,上記のように心神喪失や抵抗できない状態の相手に対してわいせつ行為に及ぶと処罰されるおそれがある点に注意が必要です。

準強制わいせつの量刑

 準強制わいせつ罪の刑罰は,6月以上10年以下の懲役です(刑法第178条)。「準」というと,強制わいせつ罪より軽いものをイメージされるかもしれませんが,刑罰は強制わいせつ罪と同じで,刑法上,犯罪としての重さに変わりはありません。
 刑罰は懲役刑のみで,罰金刑がありません。例えば罰金刑が法定刑として定められている痴漢(条例違反)の初犯の事案であれば,被害者との間で示談が成立していなくとも,略式手続により,公開の裁判を経ることなく簡易な手続によって罰金刑で済む可能性があります。しかしながら,準強制わいせつ罪には罰金刑がないため,検察官が被疑者を起訴しようとすると,正式起訴せざるを得なくなります。
 したがって,書面のみで刑罰(罰金)が科せられる略式命令で終結する道がなく,起訴された場合には公開の法廷で裁判が行われ,有罪の場合には懲役刑が科されることとなります。
  

準強制わいせつで逮捕された場合の流れ

 準強制わいせつで逮捕された場合には,その翌日または翌々日に検察庁に送致され,検察官の取調べ(弁解録取)を受けます。
 その際,検察官は,被疑者を10日間留置する勾留を裁判所に請求するかどうかを決定します。検察官が勾留請求しない場合には即日釈放されますが,検察官が勾留請求すると,被疑者はその日か翌日に裁判所に行き,裁判官の勾留質問を受けます。裁判官が勾留決定をした場合には,検察官の勾留請求日から数えて10日間,留置施設に留置されることになります。この時,裁判官が勾留請求を却下した場合には,被疑者は釈放されます。
 検察官は,最大20日間の勾留期間のうちに,被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定しなければならず,その決定ができないときは被疑者を釈放しなければなりません。
 このように,逮捕されるとそれだけで長期間勾留される可能性があります。その間,学校や会社に行くことはできず,携帯電話の使用は禁止され,家族との連絡も接見により限られた日時でしか行うことができません。長期間の欠勤や欠席により,会社や学校を辞めなければいけなくなるケースも珍しくありません。
 勾留を避け,又は勾留されたとしてもできるだけ速やかに身体拘束を解きたい場合には,検察官・裁判所に対する意見書の提出や,被害者との示談交渉など,弁護士が身柄解放に向けた活動を行うことが必要です。

準強制わいせつで逮捕されたとき弁護士をつけるメリット

 早期の身柄解放のためには,弁護士による弁護活動が必要不可欠です。逮捕や勾留は,被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために行われます。逆に言えば,検察官や裁判官に対して,逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを意見書を提出して説明することで,勾留を回避できる可能性があるのです。そのためには,弁護士が接見して被疑者本人から詳しく事情を聴き,家族から身元引受書を取得するなどして,速やかに準備をして意見書を提出する必要があります。
 また,逮捕直後に弁護士を通じて情報が得られるというメリットもあります。逮捕直後は,弁護士以外の者は面会を原則として制限されることが多く,裁判所が勾留決定を出した後,逮捕されて2,3日経ってようやく家族は面会できるようになります。
 たとえ面会できたとしても弁護士と違って面会時間は限られ,警察官立会いの面会では事件に関する細かい話をすることもできません。加えて,裁判所が接見禁止処分を下した場合には,家族であっても面会すらできなくなってしまうのです。
 また,早期の接見はご本人にとっても重要です。今後の刑事手続の流れや被疑者としての権利等について丁寧に説明を受けることにより,不安を軽減することができます。更に,認め事件の場合も否認事件の場合も,取調べにおける対応が処分との関係でとても重要になってきますので,可能であれば逮捕の当日中,できる限り早く弁護士からアドバイスを受ける必要があります。
 検察官は勾留の満期日の数日前には起訴するか不起訴にするのかの方針を立てますが,証拠が十分にある事案ですと,この時までに示談が成立していない場合には起訴されてしまいます。起訴された場合,保釈が認められない限り,刑事裁判の判決が出るまで身体拘束が続きます。判決が出るまでにかかる時間は,準強制わいせつ罪の成立を認めるか争うかなど,事案によって大きく異なります。1か月半から2か月程度で終わることもありますが事件によっては1年ほどかかることもあります。
 したがって,示談との関係でもスピードをもって動いてもらえる,刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼することが鍵となってくるでしょう。

準強制わいせつ事件での示談の必要性

 準強制わいせつ罪は,被害者の性的な自由を侵害する犯罪です。そのため,捜査段階で被害者と示談ができ,被害者が被疑者の処罰を求めていないということになれば不起訴となる確率が高いです。しかしながら,示談できずに(ないし示談活動を一切せずに)起訴となった場合,公判段階で示談ができなければ実刑判決になる可能性が否定できません。前科がなくても執行猶予付き判決になるとは限りません。起訴から執行猶予を飛ばしていきなり実刑判決になり得ます。
 不起訴と実刑の違いがいかに大きいか容易に想像がつきます。不起訴であれば前科はつきません。勤務先会社も辞めなくて済むかもしれません。家庭不和も解消するかもしれません。
 しかし,実刑となれば前科がつくだけではなく,数年間という長期間,刑務所に服役しなければならず,職は失い,家庭崩壊の可能性も高くなります。
 ですから,準強制わいせつ罪の弁護の中心は示談と言ってよく,示談の機会をできるだけ長く確保するために,早期に示談交渉に着手する必要があるのです。逮捕後はたったの23日間しか示談を成立させるチャンスがありません。中には,起訴後に示談に着手し,判決までに示談を成立させれば良いと考える方もいますが,もしその間に示談が成立しなかったら実刑なのです。
 被害者は逮捕後に一度も謝罪の措置(示談金支払い等)もない犯人に対して処罰感情を強くしており,示談の成功率は,公判段階は捜査段階と比べて低くなることが珍しくありません。

準強制わいせつで無罪を争う場合

 冤罪で逮捕された場合,捜査機関の有利になるように誤導されるなどしないよう,捜査初動の段階から細心の注意を払う必要があります。
 すなわち,そもそも取調べにおいてどのように受け答えをするのがよいのか,ありのまま自分の認識を話すのがよいのか,黙秘をすべきか,調書には署名押印すべきか等は事案によって変わってきます。本来,供述調書への署名押印は義務ではないのです。決めるのは被疑者の自由です。しかしながら捜査機関はこのことを被疑者に説明しません。当然のように供述調書に署名押印を求められます。一度署名押印された供述調書は,強い効力を持ちます。起訴後に検察官から証拠が開示され,何か新しいことを思い出し,供述調書の内容を訂正しようとしても信用されないことが珍しくありません。そのため,捜査機関に供述をするのか,供述をするとして調書に署名押印をするのかどうかの判断を自分でしてしまうと,知らない間に自分が不利な状況におかれ,万が一起訴された場合にも,無罪判決をとるのが難しくなってきます。
 したがって,冤罪で逮捕された場合には特に,早期に弁護士に相談・依頼することが大切です。
 弁護士は事案の詳細を丁寧に聞き,まず取調べの対応につき方針を決めます。黙秘をするのであれば,きちんと取調べで黙秘ができるよう練習をします。
 取調官によっては,黙秘や否認をしていると,強く当たってくるようになりますので,それに耐えられるように,弁護士は頻繁に接見し,精神的にサポートします。取調官が行き過ぎた違法な取調べをするようであれば,警察や検察に抗議書を提出します。特に,黙秘や否認をしている場合には勾留を回避することが難しく,長期間身柄拘束が続くことになりますので,弁護士という味方の存在は欠かせません。
 また,取調べで尋ねられたことや言われたことをヒントに,捜査機関が持っている証拠を予測し,その証拠の証明力を弾劾するためにこちら側から出せるものがないかといったことも検討します。
 一度起訴されてしまった場合に無罪判決をとるのは非常に困難ですので,起訴される前の捜査期間中にできる限りのことをするのが重要なのです。
 もちろん,万が一起訴されてしまった場合には,検察官からできるだけ多くの証拠の開示を受けて証拠を精査し,弁護側から出せる証拠があればそれを証拠調べ請求し,冤罪であることを説得的に示す公判活動を行います。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回は,準強制わいせつ罪で逮捕された場合のポイントについて解説いたしました。逮捕後の刑事手続きの流れを踏まえれば,少しでも早く弁護士を選任して示談交渉に着手することが不起訴処分の獲得のためには大切です。
 万が一,準強制わいせつ罪でご自身が捜査を受けたり,ご家族が逮捕されてしまった場合には,刑事弁護に強い弁護士に早急に依頼し,適切な助言を得ることをおすすめいたします。